現在、横浜を中心に、飲食店のクーポンを発行し、お店と消費者を広告でつなげるクーポンアプリ「グルメ大学」(2021年6月リリース)を提供している株式会社UNI’SON(ユニゾン)飯竹恒太郎さん。
若き学生起業家である飯竹さんは、現在大学在学中。主にInstagram(インスタグラム)を駆使し、事業を展開している。
起業までの道のりは山あり谷あり。しかし、飯竹さんはこれまでの道のりを楽しげに語る。コロナ禍での起業、そこに至る手探りの過程、そして今抱える課題とは?失敗を糧にここまでたどり着いた不屈の起業家に、体感しているリアルな「起業」を聞いた。
事業開始半年でフォロワー1万人を突破。起業のすべては予想外の事態から始まった
2020年1月、飯竹さんは大学在学中に学生の友人と株式会社UNI’SON(ユニゾン)を創業。しかし、若き学生起業家である飯竹さんは、最初から起業を目指して邁進していたわけではなかった。
「元々起業願望があったわけではありません。まさか自分が独立してやっていくとは考えてもいなかったですね。法人化したのは、何もかもがうまくいっておらず、精神的に揺れている時期でしたが、今やらないとすべてをやめてしまいそうだと感じていました。自分の未来を考えると絶対に起業した方が良いと確信していたので、勇気を出して踏み切りました。」
彼の創業のきっかけは2年前、大学2年のときに留年が決まった頃だった。ここから飯竹さんの人生は大きく変わり始める。周囲が就職活動を始める時期に、彼はどう感じ、自分の道をどう切り拓いていったのか。
「元々は就活する予定だったので、『留年が決まって、突然できたこの1年間で何ができるだろう?』と、前向きに考えたことを覚えています。最初はプログラミングを頑張ろうと思って勉強を始めました。当時、YouTubeをよく見ていたので、YouTubeを作り出しているプログラマーやクリエイターには大きな価値があると感じていたことがきっかけです。」
プログラミングに興味を抱き、順調に勉強を進めていた頃、あるアイデアが飯竹さんの頭に浮かぶ。
「プログラミングの勉強をするうちに、本当の意味で価値を創っているのは経営者なのではないかと考えるようになりました。その頃にイベント開催のアイデアが浮かびました。イベント企画自体をよく身近で見ていましたし、とりあえず自分でも何かやってみようと思い立って、友達とイベント開催を始めたことが、自分で事業を始めようと思った最初のきっかけですね。」
最初のイベントは2019年9月に開催。大盛況で幕を閉じ、2回目も12月に開催することができた。しかし、2月のイベントを企画している中、新型コロナウイルスのニュースがじわじわと世間を騒がし始める。
「コロナが始まる頃だったので、2月のイベントは赤字になりそうでした。3回イベントを開催していくうちに、経営者の方の話を聞く機会が増えました。自分でも何かやりたい、何ができるだろうと考えた結果、飲食店に目を向けました。それが今の事業『グルメ大学』の始まりです。一番初めは大学の周りの飲食店に、『Instagramを使って、近隣学生にお店を宣伝するので、僕の記事を見て来店した学生には安くしてあげてください。そして、僕が呼んだお客さんの売上の一部をください。』と営業しました。急に見ず知らずの若者が店に入ってきて営業を始めるという、とんでもない状況なのですけど(笑)、みなさん、温かく受け入れてくれたことを今でも覚えています。そのときはまだ仲間もいなかったので、一人で交渉していました。」
目指すは事業の拡大。しかし、世間はコロナ禍。数々の苦悩が降りかかる
「徐々に一緒に活動してくれる仲間も増えていきましたが、提携していた飲食店が、コロナの影響で全部閉まってしまいました。これからどうしようかとなったときに、デリバリーが流行っていたので、今度はそこに着目しました。『僕たちが運ぶので、デリバリーの商品を作ってください!』と、飲食店へお願いしたのですが、思っていたよりも注文が入らず、自分たちが一件運んでも100円の利益。実際にやってみて、デリバリーは難しいと思って諦めました。その次は、コロナ禍では正社員を雇うのが難しいという話を耳にして、企業が学生のインターンを欲しがるのでは?と、思いつきました。そこで企業と学生のマッチング事業を始めようと、プログラミングを勉強していたときの知り合いに頼んでアプリを作成するなど、色々やってみましたが、結局うまくいきませんでした。」
まさに「トライ&エラー」、思いついたらやってみる。この機動力は何よりも彼の強みである。しかし、この頃はちょうど、彼が語る「何もかもがうまくいっていなかった時期」であり、法人化へ踏み出した時期でもある。勇気を出して踏み出したどん底からのスタート。そこから見えた景色が、彼のもう一つの事業へと発展した。
「9月頃、緊急事態宣言が解除され、飲食店向けの事業をもう一回やろうと思って、改めて挑戦しました。それで、ようやく形になった事業が『グルメ大学』です。失敗の原因をひたすら分析して、SNSの運用に力を入れたところ、半年でフォロワーが1万人を越えて、知名度も上がりました。『グルメ大学』も事業の一つですが、今は、ここで培ったSNS運営のノウハウを活かしたコンサル事業とSNS運用代行の事業も飲食店中心に展開しています。
最近、「旅行」に特化したアカウントも始めました。将来的に「旅」と「グルメ」も連動させたいと考えています。とりあえず、気になったことは、やってみる。やってみないと何が難しいのかも、わからないじゃないですか。今もその繰り返しですね。」
ここまでがなんと2年半の出来事。猛スピードで駆け抜け、創りあげてきた数々の点と点が、ここで一つの道となった。
事業が形になり始めた2020年冬、横浜ビジネスグランプリのファイナリストに選出
横浜ビジネスグランプリをご存じだろうか。毎年8月に応募が開始される、横浜で起業、新たな事業を展開する起業家のためのビジネスプランコンテストであり、学生部門も同時開催される。応募には事業計画書が必要であり、ファイナリストに選ばれることは容易なことではない。この横浜ビジネスグランプリ2021の学生部門で、彼はファイナリストとして登壇する。
「横浜ビジネスグランプリ2021は、営業メンバーがたまたま見つけてきてくれました。申し込んだところ、ありがたいことに書類審査が通りました。応募の際、事業計画書を書くことによって、あやふやなところが多かった事業が整理されたので、それだけでも応募して良かったと思います。また、大勢の前で事業について話す経験はそう多くないので、緊張しましたがとてもいい経験になりました。賞金も魅力的でしたが(笑)、それ以上に得るものが多かったので、本当に出て良かったです。」
今の課題は「お金のこと」
現在は、同じく飲食店業界向けのビジネスで先駆ける企業と業務提携を行い、飲食業界特化型Instagram運用代行サービス(グルスタ)を開始。2021年6月にアプリ版「グルメ大学」のリリースと、順風満帆に見える事業活動だが、目下の課題は「お金」とのこと。
「一番初めは、インスタのアカウントを作って、お店を掲載して、フォロワーを増やすという、資金が必要ないことから始めたので、経理や税金についての知識がないまま起業してしまいました。助成金や補助金など知らなかったことも多く、お金の勉強は、もっと前からやっておけばよかったと痛感しています。
もし、将来、起業したい人に向けた教育に関わる機会があったなら、起業に関するお金の仕組みを伝えたいと強く思います。実際に起業してみて、これまでお金のことを学ぶ機会が非常に少なかったと感じているからです。個人事業主になろう、法人を作ろうと思う人が少ない理由もそこにあるのではと考えています。やりたいことがあっても、知識がないからできないという人が減って、もっと挑戦しやすい社会になったらいいなと思っています。」
最後に、今を駆け抜ける若手経営者の飯竹さんから、起業を志している人たちに向けて、今だからこそ伝えられる熱いメッセージを贈ってもらおう。
「自分のやりたいことや、こうなったら面白そう!と思うことに、まずはチャレンジしてほしいです。たとえば、ロールプレイングゲームの中で何かを選択するときは、より面白そうと感じる方を選ぶ人が多いと思います。でも、実際の自分の人生で選択するときになると、『これが普通の道だから』『やっぱり怖いから』と感じてしまって、面白そうな道を選択できない。でも、やりたいことのためなら人は頑張れるので、ぜひ自分の楽しめる道を選んでほしいです。」
「『自分が何をしたいのか』を一度、本気で考えてみると人生が楽しくなるかもしれません。少なくとも僕は、2,3年前と比べても、今が一番楽しい。もし戻れたとしても同じ道を選びます。沢山失敗してきていますけど(笑)。
何かを目標に頑張って、その目標を達成したときや、夢がかなったときに一番財産になるのは、自分のやりたいことを目指した、その道程です。まずは、自分は何がしたいのかを知るために、目の前のことに興味を持ってみる、そして色々な人の話を聞いて、勉強してみて、やりたいことが見つかったのなら、リスク背負ってでも、まずは一歩、踏み出してみてください。」
【プロフィール】
飯竹恒太郎氏
株式会社UNI‘SON 代表取締役
横浜国立大学在学中。2020年1月株式会社UNI‘SON設立。直後のコロナ禍で当初の広告事業が停止するも、失敗の原因を分析し、SNS運用に全力をかける。2021年6月現在、Instagram「グルメ大学」のフォロワーは2万人。コロナ禍での飲食店広告、SNSコンサル&運用代行事業を展開している。
【取材】
2021年6月
インタビュアー・執筆/桑原美紀(株式会社ウィルパートナーズ)
編集/馬場郁夫(株式会社ウィルパートナーズ)