【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

2020年2月22日(土)に「横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL」が、横浜市西区のランドマークホールで開催されました。横浜ビジネスグランプリは、横浜での起業・新規事業に挑戦するビジネスプランを全国から発掘するコンテストで、横浜市内で事業を行う予定の起業家やあるいは新たな事業に着手して間もない起業家、起業を目指す学生が対象です。公益財団法人 横浜企業経営支援財団の主催、横浜市経済局共催で毎年行われており、今年で22回目を迎えました。

書類選考、プレゼンテーション審査を経て、開催されるファイナルコンテストでは、(1)新規性、(2)成長性、(3)実現可能性、(4)横浜経済への影響・効果、(5)経営者力・熱意の5つの審査基準で審査を行い、最優秀賞には賞状と副賞100万円が贈呈されます。今回から新たに50歳以上の優れたビジネスプランを対象にしたシニア賞も設けられました。

今回の応募数は一般部門82件、学生部門37件の合計119件。当日のファイナルでは、一般部門のファイナリスト8名と女性起業家賞、学生部門優秀賞の受賞者がプレゼンテーションを行いました。

ファイナリストによるプレゼンテーション

プレゼンテーションの持ち時間は6分間。その後、審査員長の出雲 充氏(株式会社ユーグレナ 代表取締役社長)ほか、6名の審査員から「ビジネスプランの実現性」や「開発コスト」「市場規模」についてなど、様々な観点で質疑応答が行われました。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

株式会社リピープラス 塩野 武男氏
「架橋ポリエチレン(産廃)の再生原料化と事業化」

 
発表内容:
分子間をつないで(架橋)耐熱性を上げた架橋ポリエチレンは、給湯管や電力ケーブルの絶縁体に使われている。産業廃棄物として大量に発生している架橋ポリエチレンを資源化し、リサイクルする基礎技術を確立した。原料調達から製品開発、販売までを一貫して行うことができ、現状は支援により設備導入まで完了している。特許出願中の独自技術により、循環型社会の実現を目指す。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

クールフライヤー株式会社 山田 光二氏
「油ハネせず、油を常に新鮮に保つフライヤー」

 
発表内容:
10年以上の研究により、油ハネ、劣化の進行、オイルミスト等の揚げ調理機の課題を、シンプルな構造と過熱制御だけで解決する「クールフライヤー」を開発した。コンビニ繁盛店を想定した実証実験により、従来のフライヤーに比べ、油の消費量の大きな削減と安定的に高い調理品質の実現を確認できた。業務用フライヤーだけでなく、キッチン家電メーカーとの協業により家庭用にも展開していく計画である。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

ニチエツ株式会社 中村 高志氏
「高収益と働きやすさを両立する金型交換装置」

 
発表内容:
プラスチック射出成形機は、金型を交換することで様々なプラスチック部品を製造することができるが、金型交換は重労働で時間がかかり危険が伴う。また、従来の金型交換装置は、改善効果が小さく高額。当社が開発した金型交換装置は、他社装置が約15分かかっている金型交換時間を最短2秒台にまで短縮するなど、圧倒的なスペックと低価格を実現しており、大手成型機メーカー等と提携してこの春から販売を開始する。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

株式会社ワンスレッド 半田 真哉氏
「パパの子育てから、家族に笑顔を」

 
発表内容:
男性の育児・家事を応援する子育て応援ブランド「papakoso(パパコソ)」の主な商品は、男性が使うことを前提にデザインされた「パパバッグ」や抱っこ紐「papa-dakko(パパダッコ)」などのベビー用品である。企画から販売まで行っており、顧客のニーズに応える商品開発に取り組んでいる。Webでの販売のほかに大手百貨店でのコーナー展開も行っており、販路拡大とブランド認知度向上を目指している。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

アットドウス株式会社 中村 秀剛氏
「モバイル点滴デバイスで患者のQOLを向上する」

 
発表内容:
持ち運びのできる点滴デバイス「atDose」は、極細の針と特殊なポンプにより、超微量に局所に投薬が可能である。現在ポンプの小型化や動物実験検証を進めている。患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の維持・改善を実現し、将来的には在宅医療や遠隔医療にも展開して、IoMT (Internet of Medical Things) の分野で貢献していきたい。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

株式会社コードミー 太田 賢司氏
「世界を彩る 未来型フレグランス」

 
発表内容:
当社は、香りとITで新しいライフスタイルを創るベンチャーであり、AIとSNSの連動により、3,000パターンの香りの中から顧客に最適化された香りを調香して届けるサービスを提供している。企業向けにも、データに基づいた香りの開発で空間をデザインするサービスを提供しており、順調に導入実績を伸ばしている。将来的には、自分のフレグランス・ブランドを作って販売できるプラットフォームを構築する予定である。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

ジャパンエナジーフード合同会社 相澤 和宏氏
「現代ニーズに合わせた和の加工食品開発」

 
発表内容:
添加物不使用の玄米と味噌のシリアルバーを開発、販売している。玄米と味噌は多くの栄養素を含んだ食材であり、軽くて腹持ちも良いことから、スポーツやオフィス業務、子供向けの栄養補給食としてなど、様々なシーンで召し上がっていただける製品である。今後は高カロリータイプ、小分けタイプ、非常食向けのタイプを開発するほか、運動中にも摂取可能なアスリート向けの新製品も開発予定である。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

株式会社Oruche 上田 純也氏
「次世代のビジネスを急伸する心理学的知能」

 
発表内容:
健康に問題を抱えたまま勤務を続けてしまう「プレゼンティズム」は、現代企業が解決すべき重要課題であるが、面談やメンタルチェックシートでは不満やストレスを拾え切れない。我々が開発した人工知能による情感を認識できる技術は、30種類以上の感情を見える化し、最適な情報を出すことができる。競合他社に比べて利用環境に応じてチューニングやパーソナル化できる優位性があり、日本の感情分析市場のリードカンパニーを目指す。

続いて、女性起業家賞、学生部門優秀賞の各受賞者によるプレゼンテーションが行われました。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

女性起業家賞
colobockle 大ヶ谷 有紀子氏
「『だっこ』からはじまる、アクティブですてきなママライフ」

 
発表内容:
「mico(ミーコ)」という抱っこひもを開発。伸縮性のある素材を使用し、赤ちゃんの体重を体全体に分散させる仕組みになっている。装着時に洋服のシルエットをキレイに保つことも特長の一つである。本業はカメラマンであり、子育て中の家族写真の撮影において「自分らしいおんぶと抱っこを身につけることができれば、子育てはもっと楽しくなる」と感じたことが、同商品を開発したきっかけである。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

学生部門優秀賞
東京工業大学 平賀 良氏
「XYZ軸加速度センサー道路異常検出システム」

 
発表内容:
代表を務める東京工業大学発ベンチャー企業 「GoMA(ゴーマ)株式会社」が開発した本システムは、スマートフォンを使って道路の異常を検出するもので、車に搭載して走るだけで効率的な道路調査が可能である。これまで目視等の人的作業で行ってきた道路調査の課題を解決するこのシステムで、将来的には、運送業者等の民間企業と連携して地図データを構築し、公務員の働き方改革、市民サービスの加速、地方の雇用創出を実現したい。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL
【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL
【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL
【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

ロビーに各ファイナリストの事業を紹介する特別ブースが設置されました。休憩時間には、事業や製品に興味を持ったオーディエンスが立ち並び、ファイナリストと和やかに談笑している光景が印象的でした。

エキシビション講演

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

ファイナリストのプレゼンテーションを終えた後は、昨年度最優秀賞受賞者の「横浜バイオテクノロジー株式会社」小倉 里江子氏による、エキシビション講演が行われました。

「なぜ起業に至ったか」やビジネスモデルを模索していた当時の苦労、顧客開拓を目的に出場した横浜ビジネスグランプリ2019の受賞の効果などについて、お話しされました。グランプリ受賞後、顧客や連携企業が増えて事業が拡大しているのはもちろんのこと、「Japan Challenge Gate 2020~全国ビジネスプランコンテスト~」ファイナルに進出するなど、「横浜ビジネスグランプリ2019」出場の経験を活かしてさらなる躍進を遂げられています。来場者に向けて「横浜で起業して、心躍る毎日をおくりましょう!」というメッセージを残されました。

なお、小倉 里江子氏は、スタートアップポートヨコハマの「起業家インタビュー」で詳しく取材しています。ぜひご覧ください。
https://socialport-y.city.yokohama.lg.jp/article/20190813-15098/

表彰式

審査結果の発表前に行われた横浜市 林 琢己経済局長の挨拶では「(横浜市)関内に開所したベンチャー企業成長支援拠点『YOXO BOX』をはじめ、起業家・スタートアップ企業の育成をさらにスケールアップしていきたい」と、今後の支援に対する意気込みが語られました。

【レポート】横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL

最優秀賞を受賞したのは「高収益と働きやすさを両立する金型交換装置」を発表したニチエツ株式会社 中村 高志氏。自動化技術により世界中の成形工場の課題解決を目指す中村氏は「この賞に恥じないようにチーム一丸となって事業に取り組んで参ります」と、受賞の喜びを語られました。

授賞式後の総括では、出雲審査員長から「今大会は出場者のレベルが非常に高く、審査が難航しました」と、ファイナリストへ称賛の言葉を送られました。さらに、生産年齢人口の大幅な減少という未曾有の状況が迫る日本において、「大学・研究機関、そして優秀な人材が集積するこの横浜で、スタートアップ・ベンチャー企業がイノベーションを起こせなければ日本は立ち行かなくなる。」と熱いメッセージが送られました。

各賞受賞者

◆最優秀賞(賞状・副賞100万円)
ニチエツ株式会社 中村 高志氏
「高収益と働きやすさを両立する金型交換装置」

◆一般部門優秀賞(賞状・副賞50万円)
株式会社コードミー 太田 賢司氏
「世界を彩る 未来型フレグランス」

◆学生部門優秀賞(賞状・副賞20万円)
東京工業大学 平賀 良氏
「XYZ軸加速度センサー道路異常検出システム」

◆女性起業家賞(賞状・副賞30万円)
colobockle 大ヶ谷 有紀子氏
「『だっこ』からはじまる、アクティブですてきなママライフ」

◆シニア賞(賞状・副賞30万円)
株式会社リピープラス 塩野 武男氏
「架橋ポリエチレン(産廃)の再生原料化と事業化」

◆オーディエンス賞
アットドウス株式会社 中村 秀剛氏
「モバイル点滴デバイスで患者のQOLを向上する」

横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL概要

■ 開催日:2020年2月22日(土)13:30~17:15
■ 会場:ランドマークホール(横浜市西区みなとみらい2-2-1 ランドマークプラザ5F)
■ 募集部門:一般部門、学生部門
■ 主催:(公財)横浜企業経営支援財団
■ 共催:横浜市経済局

横浜ビジネスグランプリ2020
https://www.idec.or.jp/kigyo/ybg/

横浜ビジネスグランプリ2020 THE FINAL
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