【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ

横浜市経済局によるベンチャー支援施策「第13回横浜ベンチャーピッチ」が2019年12月3日(火)に開催されました。「横浜ベンチャーピッチ」は、ベンチャー企業が、ビジネスモデルをベンチャーキャピタルや金融機関、事業会社等に対してプレゼンテーションする機会を提供し、資金調達や事業マッチングを促進させ、更なる成長・発展に繋げることを目的としています。今年度はこれまでに2回開催されており、好評を博しています。

今回の会場は、10月31日(木)に開所した「YOXO BOX(よくぞ ボックス)」。YOXO BOXは、横浜に新しい交流を生み出すためのサンドボックス(砂場=実験場)となるという意味を込めて命名されたベンチャー企業成長支援の新たな拠点です。横浜市は「イノベーション都市・横浜宣言」をスローガンに創業やベンチャー企業支援を推進しており、その施策の一つとして設立されました。

【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ

「YOXO BOX」の施設内は、開放的なつくりであり、イノベーション創出のための交流・ビジネスイベントで利用されています。また、サポート面においては、起業志望者、ベンチャー企業等を対象とした成長支援プログラム(YOXOアクセラレータープログラム)のほか、ベンチャー支援の専門家が常駐する支援窓口での個別相談など、充実した支援体制が整備されています。

今回のベンチャーピッチのテーマは「ライフサイエンス・ヘルスケア」に関するサービスを提供するベンチャー企業5社が登壇し、各企業に7分間のプレゼンテーションと10分間の質疑応答時間が設けられました。横浜市の開会挨拶では、「横浜・関内は起業家ベンチャーの街であり、開港当時から新しい技術を発信してきました。『横浜ベンチャーピッチ』が新しいビジネスの発展の機会となることを心より願っています」と、会場に集まったオーディエンスと登壇企業へメッセージが送られました。

【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
横浜バイオテクノロジー株式会社 小倉里江子さん
【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
サルーステック株式会社 小川博司さん

1社目は、「横浜バイオテクノロジー株式会社」。博士研究員で、「横浜ビジネスグランプリ2019」の最優秀賞受賞者でもある小倉里江子さんが登壇しました。

同社は、植物の遺伝子発現関連技術を基礎とした研究開発型ベンチャー企業です。大学の研究室の強みを活かして開発した植物活性化剤(※1)の探索・評価技術により、低コストかつ短期間でのサービス提供が可能となり、顧客である植物活性化剤のメーカーや農業分野参入を考えている企業にとって利用価値の高いものといえます。

※1…植物の免疫力を高めることで、カビやウィルス、乾燥などのストレスから植物を保護する農業資材。

質疑応答での「メーカーからの農業資材の評価依頼以外に、新たに自社で植物活性化剤を開発する予定はあるのか?」という質問に対しては、「現在、大学の機材を使用し植物活性化剤を開発しているので、いずれは自社で独自に植物活性化剤を開発し、事業を拡大していきたい」と今後の展望を話されました。

なお、小倉里江子さんは、スタートアップポートヨコハマの「起業家インタビュー」で詳しく取材しています。ぜひご覧ください。
https://socialport-y.city.yokohama.lg.jp/article/20190813-15098/

2社目は、「サルーステック株式会社」。代表取締役の小川博司さんが登壇しました。同社は、「人生をより長く健やかに過ごして欲しい」という願いのもと、2014年7月に創立されたヘルスケアを中心とした研究開発型企業です。

今回の発表では、”耳は音を聞くためにだけあるのではない”をテーマに「心拍数を測るための生体信号検出機能を持つワイヤレスイヤホンやアプリなど、ヘルスケア関連のデバイス開発を進めていることと、それぞれの用途に向けて商品企画ができる企業との事業提携」についてのお話をされました。

「イヤホンでヘルスケアは可能なのか?」という質問に対しては、「イヤホン、ヘッドホンは音楽を聞く道具から、生体信号をフィードバックする道具に変わっていくでしょう!」と、今後の展望を話されました。

【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
株式会社リキッド・デザイン・システムズ 熊田幸次さん
【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
SANSHO株式会社 諸星俊郎さん

3社目は、「株式会社リキッド・デザイン・システムズ」。取締役の熊田幸次さんが登壇しました。同社は、ヘルス・ビューティーケア製品の開発会社で、主な商品としては、ベビーテック(※2)やスリープテック(※3)を開発しています。

熊田さんは、「睡眠中の子供の事故防止、睡眠中の徘徊や体調のモニタリングが可能な製品は、発売開始から半年で1千台以上の納入実績があり、新たなマーケットとしては、育児・介護分野における中国市場を視野に入れ、事業計画を立てている」と話されました。

※2…Baby(赤ちゃん)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語。妊娠、出産、子育てを助ける製品やITサービスの総称。
※3…Sleep(睡眠)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語。IT等の技術を活用し睡眠状態を測定する製品やサービス、デバイス。

4社目は、「SANSHO株式会社」。代表取締役の諸星俊郎さんが登壇しました。同社は医薬開発を目指すベンチャー企業であり、高齢者の方に多い変形性膝関節症の治療薬開発を進めています。この領域においては、現在、根本的治療薬はほとんどない状態と言われており、基礎研究・開発を進めている企業は世界で初めてだそうです。

諸星さんは「高齢化社会であることに加え、海外でも患者数は増加傾向にあるため、今後を見据え海外での治験を進めていること、また、ベンチャーピッチに参加した目的の一つに、提携先となる製薬企業を探していること」について語られました。ベンチャーキャピタル担当者から、知財戦略について質問された際には、医療開発に関わる知的財産権についての現状と今後の展望について話されました。

【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
ドクターメイト株式会社 青柳直樹さん

最後は、「ドクターメイト株式会社」。代表取締役の青柳直樹さんが登壇しました。当該企業では、介護施設の課題である医師不足を解消するために、看護師と専門医師チームをチャットでつなぐ、介護施設スタッフ専用の医療相談サービスを提供しています。

青柳さん自身、経営者であると同時に現役の皮膚科医でもあり、介護施設への往診を行っています。ドクターメイトの参画メンバーには、現役医師や医療現場での経験豊富なスタッフも在籍していることから、「このサービスは、365日相談可能であると同時に、様々な分野の専門医師が在籍しているため、各々の専門家の意見が得られることが特徴」と話されました。

さらに、介護施設の嘱託医師にも情報を共有することで、きめ細やかで総合的な医療を行うことが可能であることを発表されました。質疑応答においては「法改正によって介護施設でなかなか思うような医療が行えなくなった」ことなど、介護施設におけるリアルな現状を明かしてくれました。

【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ
【レポート】第13回横浜ベンチャーピッチ

今回のベンチャーピッチでは、会場は満席で大いに盛り上がり、全5社のプレゼン終了後は、多くのオーディエンスが会場に残り、名刺交換会が行われました。各登壇者の前には、事業や製品に興味を持ったオーディエンスが立ち並び、新たな出会いの場となっている様子が伺えました。この場所から新たな人的ネットワークが生まれ、イノベーションを創り出すことができるのか、今後の各社の事業展開が期待されます。

第13回横浜ベンチャーピッチ概要

■ 開催日:2019年12月3日(火)15:00~18:00
■ 会場:YOXO BOX横浜市中区尾上町一丁目6番 VORT横浜関内Ⅱ(1階)
■ 参加料:無料
■ 参加対象者:金融機関、ベンチャーキャピタル、事業会社、メディア、など
■ テーマ:ライフサイエンス・ヘルスケア
■ 登壇企業(五十音順)
①サルーステック株式会社
https://salustek.com/
②SANSHO株式会社
http://www.sanshopharma.co.jp/
③ドクターメイト株式会社
https://doctormate.co.jp/
④横浜バイオテクノロジー株式会社
http://ybt.co.jp/
⑤株式会社リキッド・デザイン・システムズ
https://liquiddesign.co.jp/

第14回横浜ベンチャーピッチ

次回の横浜ベンチャーピッチ(2020年2月20日(木))も要注目。テーマは「横浜市内ベンチャー特集」です。業種不問ですので、様々な企業の応募をお待ちしております。

【締切1/7】「横浜ベンチャーピッチ」第14回 登壇企業を募集します!

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