ビヨンドザリーフ 楠 佳英さん《横浜スタートアップ事業者レポート》


貝がらをモチーフとした編み物ブランド「ビヨンドザリーフ」。編み手を担うのはなんとシニア層を中心とする女性たちだ。株式会社ビヨンドザリーフ 代表取締役の楠 佳英さんは、会社を経営する上で、明確なビジョンとミッションを持つ。

ビヨンドザリーフのビジョンは、編み物という手段、ファッションブランドという媒体を通して、女性とシニアが何歳になっても尊厳を持って生きられる社会を創ること。そして、ミッションは、何歳になっても<好き>を仕事に出来る仕組みを作ること。そのために「集える場所、共に働く仲間、好きな仕事」を継続して提供すること。

目指すビジョンやミッションを形にするため、今年7月に東急東横線日吉駅近くにアトリエ兼ショップをオープンさせた。常に前へ進み続ける楠さんに起業のきっかけや思いを聞いた。

[ 表紙写真 ]日吉駅から徒歩2分、隠れ家的な立地のアトリエ兼ショップ。バッグ好きの女性たちを虜にする、デザイン性の高い商品が豊富に並ぶ。

 

きっかけは編み物好きの義母

楠さんは、元々はファッション誌の編集者として働いていた。そんな楠さんが編み物ブランドを立ち上げたきっかけは、義母のミチコさんだ。ミチコさんは数年前に夫を亡くしてからというもの、すっかり元気を失っていた。元々編み物が得意だった義母は、寂しさを埋めるかのように、次々と作品を作っては楠さんにプレゼントするようになる。


義母のミチコさん。ビヨンドザリーフでの仕事を通し、元気な笑顔を取り戻した

 

「義母の作ってくれる編み物は、始めは小さな作品だったのがどんどん大きな作品になって技術もどんどん上達していきました。義母には膨大な時間があります。この時間と手間を今の時代に見合う新たな価値に変えられれば、と思いました」。楠さんの義母への思いは、多くのシニア女性に共通する社会課題に結びついていく。

2014年7月、楠さんは個人事業主として、編み物ブランド「ビヨンドザリーフ」をスタートさせた。当初は会社に勤め続けながらの二束のわらじだったが、ビヨンドザリーフの仕事への比重がみるみる増え、1年半後に会社を退職してフリーライターとなった。

「編集の仕事は、本当は辞めたくなかったんです。でも、雑誌は私が抜けても毎月発行されますが、義母を助けることは自分しかできないと思いました。そう考えると自ずと答えは出ていました」と、楠さんはビヨンドザリーフへかける当時の思いを語った。

 

法人化を決意、そしてブランドの確立へ

立ち上げから1年半がたった2015年12月、楠さんはビヨンドザリーフを法人化することを決意した。ビジネスが大きくなるにつれ、個人事業主として事業を行うことへの限界を感じたのだ。百貨店との取引や原材料となる品質の良い糸の仕入れは、個人事業主として行うと相手からの信頼が得られず難しい。ビジネスをより前へ進めていくために、楠さんは法人化へと踏み切った。加えて、エンジェルによる投資を受ける機会に恵まれたことも追い風となった。

「法人化は、一緒に働くスタッフたちへ、本気で事業を進めることのメッセージにもなったと思います」と、楠さんは語る。

現在、事業を担うスタッフは7人。全員が主婦だという。契約は各人の仕事量に見合った月極めで、それぞれの家庭の事情によって柔軟に働くことができる仕組みになっている。仕事の内容は、顧客からの受注や在庫の管理、編み手と縫製担当のコーディネートなど。うち1人は編み物インストラクターの資格をもち、編み手の研修とクオリティの管理を担う。デザインは楠さんを中心に、スタイリストも仲間に入る。

 
(左)ニットクラッチバッグ。カラーのバリエーションは5種と豊富なラインナップ
(右)ファーのついたクラッチバッグ。商品には編み手と縫い手の印と手書きのサインが記されたカードが付く

 

義母1人からスタートした編み手・縫い手は、現在は約45人へと広がっている。年齢層は40~80代と幅広く、アクティブシニアと呼ばれる元気な60代も多い。編み手に加わりたいと、友人や新聞掲載、SNSのつながりなどを通じて問い合わせも多く入る。中でも多いのは、「母を仲間に入れてほしい」という娘さんからの問い合わせだという。横浜市の港北区や青葉区の地域を中心に、遠方は埼玉や千葉から参加する人もいる。

ビヨンドザリーフでは、確かな技術を確保するため、編み手・縫い手の採用には一定の条件を設けている。「シニアであってもブランドのクオリティへの妥協はありません」と楠さん。ブランドへ寄せられる顧客からの高い信頼を何よりも大切にするためだ。編み手たちは採用後も研修を通して学び続け、商品のクオリティを高め維持している。

また、採用の面接は編み手・縫い手自身が行う。自分たちが一緒に働きたいと思う人を採用してもらうことは、作り手自身のモチベーションへも繋がることとなる。

 

シニア女性たちが輝けるしくみ

女性の空いている時間は細切れだ。家事や育児・介護などの隙間の時間を上手く使って、編み手たちは主に在宅で製作することが多い。アトリエに通うのは1週間に1回程度で良い一方、毎日アトリエに通う人も歓迎する。編み手・縫い手それぞれのペースとやり方で負担なく、働くことができるのも魅力の一つだ。

これは新しい働き方の提案だと、楠さんは語る。「自分のライフスタイルを崩さず、好きな時間に仕事をして働けることが理想です。研修や打合せでアトリエに来ると、編み物縫い物が好きな仲間と会って情報交換ができ、それがいい仕事につながります。基本的には受注生産の方式なので納期がありますが、お子さんの夏休みや急な用事が入った場合を想定して、受注量は全体のキャパシティの7割に抑えています。編み手・縫い手にとって無理のない体制にしています。」

義母ミチコさんの友人で「コミュニケーション能力が素晴らしい」というマサコさんも編み手の一人。生き生きと、そしてにこやかにマサコさんは語る。「ここは、一人の人間として尊厳をもって参加できる場です。私が楽しくアトリエに通っているのを見て、家族も安心し、喜んでくれています。することがないと孫や娘が構ってくれないなど、依存心が生まれますよね。私が仕事で忙しくして“予定が埋まっているの”と言うと、孫から“おばあちゃん、まるでタレントさんみたいだね”って言われるんです」。

1人の人間として、いくつになっても活躍できる場。提供した楠さんも、参加する女性たちも、みんなが素敵な笑顔になる。(左から順にマサコさん、楠さん、楠さんの義母のミチコさん)

 

マサコさんやミチコさんたちの素敵な笑顔を慕って、地元の顧客もショップに訪れる。会話を楽しみ、時には編み物を教わることもあるという。その様子はまるで、本当の祖母と孫のようだ。

 

実店舗で社会課題を可視化する

日吉駅近くに、ビヨンドザリーフがアトリエ兼ショップをオープンして2カ月。これまでは地域のコミュニティカフェで活動していたが、念願の拠点ができた。


この7月末にオープンした、アトリエ兼ショップの入口。オシャレなたたずまいの大きな窓を覗くと、笑顔あふれるシニア女性たちの様子が伺える。上階には20人の研修スペースもある

 

実店舗は固定費というリスクがある。しかし、その一方で実店舗を持つことのメリットは大きいと楠さんは話す。「実店舗をもつことで得られる、オフラインでの人の繋がりは無限の可能性があると考えています。例えば、お客さんの喜ぶ顔が編み手・縫い手側にも見えることで、作り手も幸せになり、幸せが循環します。また、お客さんにシニアがいきいきと活躍する姿を見てもらうこともできます。その他にも、外部の方との打合せを店で行うことができるので、会社や商品イメージが直接伝わる点も良いですね」。

また、店舗をオープンさせるにあたり、横浜市の補助金も使用したという。アトリエ正面の開放的な入口は、横浜市経済局商業振興課が行っている、「商店街店舗誘致事業」を受け、設置。この助成を受けるにあたり、横浜ビジネスグランプリ2017ファイナリストになったこともプラスに働いた。

 

目標はコミュニティ作りと年商3億円。もっと先の未来へ

目標は、この場所を人と人が繋がるコミュニティにする事と、売上高を年商3億円にすることだと楠さんは語る。

「2020年の東京オリンピックを商機に、インバウンド向けECサイトをこの11月か12月には実装して、海外へ販路を開きたい。そして編み・縫い手になりたい人たちを、もっと受け入れられる売上をあげていきたい。目標達成のためには、私の経営手腕をもっと高め、熱量の高い右腕となる人材も欲しいですね」


今後のビジョンは海外販路、そしてパッケージの全国展開へと夢が広がる

 

さらに、楠さんはその先の未来を次のように描く。「シニア層による編み物ブランドを軌道に乗せ、社会課題を解決するパッケージをつくりたいと考えています。例えば、地域で埋もれた伝統産業を掘り起こし、デザインして生産と販売をする。社会課題を浮き彫りにし、課題解決にコミットしてプロモーション含めた販売までを行う、そんな企業にビヨンドザリーフを育てたいという思いがあります。パッケージ化に成功できれば、他の事業モデルに応用してもらい、全国各地で展開して欲しい。これは私の挑戦です」楠さんの視線の先には壮大な未来像が広がる。

ビヨンドザリーフは、先駆者として情報を発信しながら、編み物をビジネスにしたシニア層の生きがいを作り続けていく。

 

起業を目指す方へのメッセージ

「起業家を目指す方へ伝えたいのは、リスクを取って、起業したあなたはヒーローだということです」と楠さん。この言葉は、今年の7月、シリコンバレーに滞在した際に、ウーバー(UBER)の運転手から言われた言葉だという。

楠さんは今年8月の2週間、東京都のベンチャー成長促進事業である、APT Women 2期生として、米国サンフランシスコ・シリコンバレーに滞在した。アップルやグーグルなどを排出する起業家の街、シリコンバレーでは、毎日のようにスタートアップ企業が生まれ、イノベーションが起きる。

「シリコンバレーに行って必ず聞かれることが「あなたはどんな失敗をしたのか」ということでした。多くのベンチャーキャピタルは起業家たちへ投資し、失敗してもそこから学ぶことを応援します。失敗しても、その後成功している人が沢山いました」

日本の若い皆さんにとって、起業家は将来の選択肢の一つになってほしいと思います。ただし、日本には起業家を育てる社会風土がまだまだ育っていません。起業家は資金を融資で借りるしかなく、失敗するとなかなか這い上がることはできません。日本でも、若者たちが起業に挑戦しやすい環境を、私たちの世代が提供しなければと感じています」

 

組織概要

株式会社ビヨンドザリーフ
http://beyondthereef.jp

所在地:横浜市港北区日吉本町1-24-8-A (ショップ兼アトリエ)

【取材】
インタビュアー/齋藤保(株式会社イータウン代表取締役)
レポート・撮影/中山貴久子(株式会社イータウンレポーター/森ノオトライター)

取材:2018年9月

 

【お知らせ】
楠さんは、平成30年11月3日(土)に開催される、「横浜女性ネットッワーク&ウーマンビジネスフェスタ 分科会(2)自分を魅せる ~共感を呼ぶビジネス~」へパネリストとしてご登壇されます。直接お話しを聞くことができるチャンスです。

お申し込みはこちらから
https://network-wobizfesta.yokohama/


ビヨンドザリーフ 楠 佳英さん《横浜スタートアップ事業者レポート》


貝がらをモチーフとした編み物ブランド「ビヨンドザリーフ」。編み手を担うのはなんとシニア層を中心とする女性たちだ。株式会社ビヨンドザリーフ 代表取締役の楠 佳英さんは、会社を経営する上で、明確なビジョンとミッションを持つ。

ビヨンドザリーフのビジョンは、編み物という手段、ファッションブランドという媒体を通して、女性とシニアが何歳になっても尊厳を持って生きられる社会を創ること。そして、ミッションは、何歳になっても<好き>を仕事に出来る仕組みを作ること。そのために「集える場所、共に働く仲間、好きな仕事」を継続して提供すること。

目指すビジョンやミッションを形にするため、今年7月に東急東横線日吉駅近くにアトリエ兼ショップをオープンさせた。常に前へ進み続ける楠さんに起業のきっかけや思いを聞いた。

[ 表紙写真 ]日吉駅から徒歩2分、隠れ家的な立地のアトリエ兼ショップ。バッグ好きの女性たちを虜にする、デザイン性の高い商品が豊富に並ぶ。

 

きっかけは編み物好きの義母

楠さんは、元々はファッション誌の編集者として働いていた。そんな楠さんが編み物ブランドを立ち上げたきっかけは、義母のミチコさんだ。ミチコさんは数年前に夫を亡くしてからというもの、すっかり元気を失っていた。元々編み物が得意だった義母は、寂しさを埋めるかのように、次々と作品を作っては楠さんにプレゼントするようになる。


義母のミチコさん。ビヨンドザリーフでの仕事を通し、元気な笑顔を取り戻した

 

「義母の作ってくれる編み物は、始めは小さな作品だったのがどんどん大きな作品になって技術もどんどん上達していきました。義母には膨大な時間があります。この時間と手間を今の時代に見合う新たな価値に変えられれば、と思いました」。楠さんの義母への思いは、多くのシニア女性に共通する社会課題に結びついていく。

2014年7月、楠さんは個人事業主として、編み物ブランド「ビヨンドザリーフ」をスタートさせた。当初は会社に勤め続けながらの二束のわらじだったが、ビヨンドザリーフの仕事への比重がみるみる増え、1年半後に会社を退職してフリーライターとなった。

「編集の仕事は、本当は辞めたくなかったんです。でも、雑誌は私が抜けても毎月発行されますが、義母を助けることは自分しかできないと思いました。そう考えると自ずと答えは出ていました」と、楠さんはビヨンドザリーフへかける当時の思いを語った。

 

法人化を決意、そしてブランドの確立へ

立ち上げから1年半がたった2015年12月、楠さんはビヨンドザリーフを法人化することを決意した。ビジネスが大きくなるにつれ、個人事業主として事業を行うことへの限界を感じたのだ。百貨店との取引や原材料となる品質の良い糸の仕入れは、個人事業主として行うと相手からの信頼が得られず難しい。ビジネスをより前へ進めていくために、楠さんは法人化へと踏み切った。加えて、エンジェルによる投資を受ける機会に恵まれたことも追い風となった。

「法人化は、一緒に働くスタッフたちへ、本気で事業を進めることのメッセージにもなったと思います」と、楠さんは語る。

現在、事業を担うスタッフは7人。全員が主婦だという。契約は各人の仕事量に見合った月極めで、それぞれの家庭の事情によって柔軟に働くことができる仕組みになっている。仕事の内容は、顧客からの受注や在庫の管理、編み手と縫製担当のコーディネートなど。うち1人は編み物インストラクターの資格をもち、編み手の研修とクオリティの管理を担う。デザインは楠さんを中心に、スタイリストも仲間に入る。

 
(左)ニットクラッチバッグ。カラーのバリエーションは5種と豊富なラインナップ
(右)ファーのついたクラッチバッグ。商品には編み手と縫い手の印と手書きのサインが記されたカードが付く

 

義母1人からスタートした編み手・縫い手は、現在は約45人へと広がっている。年齢層は40~80代と幅広く、アクティブシニアと呼ばれる元気な60代も多い。編み手に加わりたいと、友人や新聞掲載、SNSのつながりなどを通じて問い合わせも多く入る。中でも多いのは、「母を仲間に入れてほしい」という娘さんからの問い合わせだという。横浜市の港北区や青葉区の地域を中心に、遠方は埼玉や千葉から参加する人もいる。

ビヨンドザリーフでは、確かな技術を確保するため、編み手・縫い手の採用には一定の条件を設けている。「シニアであってもブランドのクオリティへの妥協はありません」と楠さん。ブランドへ寄せられる顧客からの高い信頼を何よりも大切にするためだ。編み手たちは採用後も研修を通して学び続け、商品のクオリティを高め維持している。

また、採用の面接は編み手・縫い手自身が行う。自分たちが一緒に働きたいと思う人を採用してもらうことは、作り手自身のモチベーションへも繋がることとなる。

 

シニア女性たちが輝けるしくみ

女性の空いている時間は細切れだ。家事や育児・介護などの隙間の時間を上手く使って、編み手たちは主に在宅で製作することが多い。アトリエに通うのは1週間に1回程度で良い一方、毎日アトリエに通う人も歓迎する。編み手・縫い手それぞれのペースとやり方で負担なく、働くことができるのも魅力の一つだ。

これは新しい働き方の提案だと、楠さんは語る。「自分のライフスタイルを崩さず、好きな時間に仕事をして働けることが理想です。研修や打合せでアトリエに来ると、編み物縫い物が好きな仲間と会って情報交換ができ、それがいい仕事につながります。基本的には受注生産の方式なので納期がありますが、お子さんの夏休みや急な用事が入った場合を想定して、受注量は全体のキャパシティの7割に抑えています。編み手・縫い手にとって無理のない体制にしています。」

義母ミチコさんの友人で「コミュニケーション能力が素晴らしい」というマサコさんも編み手の一人。生き生きと、そしてにこやかにマサコさんは語る。「ここは、一人の人間として尊厳をもって参加できる場です。私が楽しくアトリエに通っているのを見て、家族も安心し、喜んでくれています。することがないと孫や娘が構ってくれないなど、依存心が生まれますよね。私が仕事で忙しくして“予定が埋まっているの”と言うと、孫から“おばあちゃん、まるでタレントさんみたいだね”って言われるんです」。

1人の人間として、いくつになっても活躍できる場。提供した楠さんも、参加する女性たちも、みんなが素敵な笑顔になる。(左から順にマサコさん、楠さん、楠さんの義母のミチコさん)

 

マサコさんやミチコさんたちの素敵な笑顔を慕って、地元の顧客もショップに訪れる。会話を楽しみ、時には編み物を教わることもあるという。その様子はまるで、本当の祖母と孫のようだ。

 

実店舗で社会課題を可視化する

日吉駅近くに、ビヨンドザリーフがアトリエ兼ショップをオープンして2カ月。これまでは地域のコミュニティカフェで活動していたが、念願の拠点ができた。


この7月末にオープンした、アトリエ兼ショップの入口。オシャレなたたずまいの大きな窓を覗くと、笑顔あふれるシニア女性たちの様子が伺える。上階には20人の研修スペースもある

 

実店舗は固定費というリスクがある。しかし、その一方で実店舗を持つことのメリットは大きいと楠さんは話す。「実店舗をもつことで得られる、オフラインでの人の繋がりは無限の可能性があると考えています。例えば、お客さんの喜ぶ顔が編み手・縫い手側にも見えることで、作り手も幸せになり、幸せが循環します。また、お客さんにシニアがいきいきと活躍する姿を見てもらうこともできます。その他にも、外部の方との打合せを店で行うことができるので、会社や商品イメージが直接伝わる点も良いですね」。

また、店舗をオープンさせるにあたり、横浜市の補助金も使用したという。アトリエ正面の開放的な入口は、横浜市経済局商業振興課が行っている、「商店街店舗誘致事業」を受け、設置。この助成を受けるにあたり、横浜ビジネスグランプリ2017ファイナリストになったこともプラスに働いた。

 

目標はコミュニティ作りと年商3億円。もっと先の未来へ

目標は、この場所を人と人が繋がるコミュニティにする事と、売上高を年商3億円にすることだと楠さんは語る。

「2020年の東京オリンピックを商機に、インバウンド向けECサイトをこの11月か12月には実装して、海外へ販路を開きたい。そして編み・縫い手になりたい人たちを、もっと受け入れられる売上をあげていきたい。目標達成のためには、私の経営手腕をもっと高め、熱量の高い右腕となる人材も欲しいですね」


今後のビジョンは海外販路、そしてパッケージの全国展開へと夢が広がる

 

さらに、楠さんはその先の未来を次のように描く。「シニア層による編み物ブランドを軌道に乗せ、社会課題を解決するパッケージをつくりたいと考えています。例えば、地域で埋もれた伝統産業を掘り起こし、デザインして生産と販売をする。社会課題を浮き彫りにし、課題解決にコミットしてプロモーション含めた販売までを行う、そんな企業にビヨンドザリーフを育てたいという思いがあります。パッケージ化に成功できれば、他の事業モデルに応用してもらい、全国各地で展開して欲しい。これは私の挑戦です」楠さんの視線の先には壮大な未来像が広がる。

ビヨンドザリーフは、先駆者として情報を発信しながら、編み物をビジネスにしたシニア層の生きがいを作り続けていく。

 

起業を目指す方へのメッセージ

「起業家を目指す方へ伝えたいのは、リスクを取って、起業したあなたはヒーローだということです」と楠さん。この言葉は、今年の7月、シリコンバレーに滞在した際に、ウーバー(UBER)の運転手から言われた言葉だという。

楠さんは今年8月の2週間、東京都のベンチャー成長促進事業である、APT Women 2期生として、米国サンフランシスコ・シリコンバレーに滞在した。アップルやグーグルなどを排出する起業家の街、シリコンバレーでは、毎日のようにスタートアップ企業が生まれ、イノベーションが起きる。

「シリコンバレーに行って必ず聞かれることが「あなたはどんな失敗をしたのか」ということでした。多くのベンチャーキャピタルは起業家たちへ投資し、失敗してもそこから学ぶことを応援します。失敗しても、その後成功している人が沢山いました」

日本の若い皆さんにとって、起業家は将来の選択肢の一つになってほしいと思います。ただし、日本には起業家を育てる社会風土がまだまだ育っていません。起業家は資金を融資で借りるしかなく、失敗するとなかなか這い上がることはできません。日本でも、若者たちが起業に挑戦しやすい環境を、私たちの世代が提供しなければと感じています」

 

組織概要

株式会社ビヨンドザリーフ
http://beyondthereef.jp

所在地:横浜市港北区日吉本町1-24-8-A (ショップ兼アトリエ)

【取材】
インタビュアー/齋藤保(株式会社イータウン代表取締役)
レポート・撮影/中山貴久子(株式会社イータウンレポーター/森ノオトライター)

取材:2018年9月

 

【お知らせ】
楠さんは、平成30年11月3日(土)に開催される、「横浜女性ネットッワーク&ウーマンビジネスフェスタ 分科会(2)自分を魅せる ~共感を呼ぶビジネス~」へパネリストとしてご登壇されます。直接お話しを聞くことができるチャンスです。

お申し込みはこちらから
https://network-wobizfesta.yokohama/