バルーンで会場装飾やギフト用アレンジを手掛ける「ハピバルン」を運営する、はなわ かよこさんをたずねた。女性企業家たまご塾の4期生としてビジネスを学び、2017年には市営地下鉄戸塚駅構内に横浜市が設置した女性企業家トライアルスペース「Crea’s Market」に出店。同年秋には、横浜市が行う、「輝く女性起業家プロモーション事業」で百貨店とのマッチングに成功。販路拡大に繋げた。今年6月には市営地下鉄踊場駅近くのスーパーマーケットの地下1階に自身の店舗をオープンさせた。様々な経験から感じ取られたものが起業につながったという興味深いお話を、はなわさんに伺った。

 

バルーンでHAPPY空間創造業

就職内定をもらっていたが、直前で持病を原因に就職が取り消されてしまった。新卒での就職活動には時期が間に合わず、さまざまな仕事にチャレンジすることとなった。この頃に“私自身で何かできないだろうか”という考えを持つようになったそうだ。

「バルーンの良さは、短時間で空間をきれいに飾りつけられることです。何もなかった空間を、装飾することで鮮やかに、人を引き付ける空間へ変えることができるのが最大の魅力だと思います」

幸せな空間を作り上げるバルーン装飾に憧れて、バルーンショップでアルバイトを始めた。その後、エミリーズバルーン・アートビジネススクールでテクニックを習得し、現場で腕を磨いた。そして、男女共同参画センター横浜が主催した女性企業家たまご塾でビジネスを学び、2011年3月の起業予定で準備を進めた。

しかし、起業予定日の前日に3.11東日本大震災がおこった。この影響で起業は11月に延期したが、まだ世間の雰囲気はバルーン等の装飾を自粛せざるを得ない状況だった。そのような中で、海外のバルーンアーティストが被災地で活動しているニュースを見て、はなわさんも何か自分でもできないかと考えたそうだ。翌年になり横浜市社会福祉協議会のボランティアバスで岩手県釜石市に向かいボランティア活動を行った。

「釜石市では納涼祭に参加してバルーンで会場を飾り付けしました。ボランティアバスは2年間参加して数回現地に入りました。仮設住宅で暮らす漁師さんとお話しする機会があり、漁が再開できない厳しい状況を直接伺い、これが仕事について深く考えるきっかけとなり私はバルーンを仕事として続けていくことを決意しました」

チャレンジがターニングポイントとなる

起業後は、自宅兼事務所でウェディング装飾やイベント等を主な仕事としていた。バルーンの性質として出荷直前でガスを使うために徹夜作業になることも多く、忙しい日々を送っていたそうだ。

しかし、起業から約5年が経った頃、転機が訪れる。「Crea’s Market」への出店だ。「Crea’s Market」とは、横浜市が運営するトライアルスペース。(平成29年度廃止)戸塚駅構内の共同店舗スペースの1区画を使って、専門家からのアドバイスを受けながら試験的に店舗を運営し、事業の実現性を高めていく。Crea’s Marketでの店舗運営は週6日。出店すれば、今までのようなイベント等の仕事をすることは難しくなる。店舗の運営だけで事業が成り立つのか、店舗という事業形態が自分に合っているか、迷いもあった。しかし、次のステージへ進むため、はなわさんは挑戦することを決意する。

出店期間は1年間。専門家からアドバイスされたことは次々に実行し、経営に関する知識を深めていった。結果として、店舗いう形態は自分に合っていた、とはなわさんは語る。

「店舗を持つことでお客様と対面で会話できることがよかったと感じました。お客様の表情などから気持ちが伝わることもあり、その場ですぐに商品へ反映することができる点に楽しみを感じました。」

また、この出店の経験を通し、 “こだわりがない”ことが自分の強みだと気づくことができたという。自分のデザインがないからこそ、お客様それぞれの想いや要望を新しい発想で商品に取り入れていくことができるのだ。

はなわさんは、2017年度、輝く女性起業家プロモーションウィークスにも参加。京急百貨店、MARK IS みなとみらい、モザイクモール港北の3店舗とのマッチングに成功した。今年の春には、プロモーションウィークスで繋がりを持った、そごう横浜店からも仕事の依頼を受けたという。

横浜市の事業を上手に活用しながら活動の場を広げるはなわさん。その商品の魅力と人柄が多くの人を惹きつけるのだろう。

 

課題は安定した収益づくり

現在も1人で事業を行っており、店舗を出店したことによって1人では制作数に限界があることを痛感し、事業拡大のためにも雇用が必要だと感じている。

「株式会社化を目標にしています。売上は年間800万~1000万を目指しています。向こう2年間でどこまで大きくすることができるのかを考え、挑戦してみたいです。」

その背景には、「バルーンの可能性を信じ、バルーンで食べていく!」という強い意志がある。ぶれずにまっすぐに生きていきたいとはなわさんは語る。事業を安定して継続させていくために、個人のお客様の獲得だけでなく、今後は法人の顧客獲得も目指していきたいという。

 

現在と今後のビジョン

 

はなわさんの店舗には、私たちが想像するバルーンとは異なる、珍しい商品が揃っている。ふくらまさないゴム風船を使って作成されたバルーンフラワーは、バラの花やカエル等、アイデア溢れる可愛らしい商品がそろっており、一度店舗に足を運ばれることをお勧めしたい。また、今年度は、店舗の販売だけでなく、ワークショップや展示会への出展へも力を入れる。

8月11日から8月26日にかけて、自身の店舗にて1コインワークショップを開催した。バルーンを使用したお魚釣りやゴム風船で作成するチョコレート等は子どもたちに好評だったという。

「子どもたちの喜ぶ姿を目の前で見られた時はうれしく、達成感があります。子どもが興奮してバルーンを割ってしまうこともあるのですが、それくらいに人を引き付ける魅力のあるものなのだと思います」

  

現在は横浜市が主催する、横浜女性起業家COLLECTION2018に向けて準備も進めており、コンセプトは「写真映え」することで検討中。SNS人気を活かした戦略を立てているとのことで、机の大きさから、色遣いまで細かく考えているそうだ。

「デパートの担当者向け、バイヤー向け、一般消費者向けと分かりやすく差別化してアプローチし、それぞれに思いが伝わる展示を模索してチャレンジしたいです」と語る。

今回、はなわさんは、終始明るく笑顔で、バルーンの魅力や自身の経験を話してくれた。多くの苦難もあったがそれを乗り越え、バルーンを仕事にするという思いを大事にしつつ、事業として成り立たせていくために現在も奮闘中である。バルーン・デコレーターはなわさんのこれからの活躍から目が離せない。

 

組織概要

ハピバルン
https://hapibalon.wixsite.com/website

Facebook:https://www.facebook.com/BalloonDeHappy/
Instagram:https://www.instagram.com/kayoko_hanawa/?hl=ja

 

※横浜女性起業家COLLECTION2018
2018年9月6日に新都市ホール(そごう横浜店9階)で開催。47の女性起業家出展者が、女性の感性を活かした商品を展示・販売する。一般の方のご来場も可能。
https://willpartners.co.jp/30women-promotion/

【取材】
インタビュアー/野崎智也 (株式会社イータウン)
レポート・撮影/角田優作(株式会社イータウン)
取材:2018年8月